Sturgeon Moon 9th August 2025
チョウザメ月に照らされて——先住民の知恵と季節のリズム
夜空を見上げれば、季節ごとに表情を変える満月が、静かに私たちを見つめ返してきます。現代に生きる私たちは、月の満ち欠けに日常を左右されることはあまりありませんが、かつての人々にとって月は、生活と深く結びついた自然のカレンダーでした。
アメリカの先住民たちは、季節の移ろいを把握するために、それぞれの月に見られる満月に名前をつけてきました。その名づけには、動物や植物、自然現象、日々の営みが反映されており、人々の暮らしと自然との強いつながりが感じられます。
たとえば8月の満月は、「スタージェンムーン(Sturgeon Moon/チョウザメ月)」と呼ばれています。この名前は、五大湖やその他の大きな水域でチョウザメの漁が盛んになる時期であることに由来します。古代より、チョウザメは重要な食料源であり、漁の豊かさは共同体の生活を支えるものでした。そんな時期に昇る満月は、まさに実りと恵みの象徴だったのです。
月に名前をつけるという行為は、単に暦を記録するための手段にとどまらず、自然と調和して生きるための知恵でもありました。夜空に輝く「チョウザメ月」は、夏の終わりを告げ、秋の気配をほのかに運んできます。田畑は実りを迎え、水辺には豊かな命の気配が満ちる。そんな季節の巡りを、先住民たちは肌で感じ、月に託して記憶してきたのです。
現代社会では、カレンダーアプリやニュース速報が時間や季節を教えてくれますが、たまには夜空を見上げ、「今月の月にはどんな名前がついていたのだろう」と思いを馳せてみるのも良いかもしれません。月が語る物語に耳を傾けることで、私たちは自然と、そして過去と、ほんの少しだけ近づくことができるのです。



