渋谷西村總本店でジェラート

FOOD

渋谷西村總本店でジェラート

渋谷西村の思い出

明治43年、駕籠町(現在の文京区小石川)に高級果実店として創業したのが、老舗フルーツ店の渋谷西村フルーツパーラーである。現在の渋谷スクランブル交差点に面した店舗が開設されたのは昭和10年。当時、駅前にはあの忠犬ハチ公が住みつき、人々を見守っていた時代だった。絶えず姿を変え続ける渋谷の街の中で、西村は変わらぬ姿勢で瑞々しい果実を扱い続けてきた。厳選されたフルーツを、最も美味しい形で提供する。その哲学は、時代が変わっても揺らいでいない。

そんな老舗の西村だが、私にとっての思い出はもう少し個人的で、そして少し雑多な渋谷の空気と結びついている。学生の頃、よく待ち合わせに使っていた場所があった。SHIBUYA109の1階正面入口の横にある階段を上がったところに、当時は屋外の休憩スペースがあったのだ。合コンの待ち合わせなどで、よくそこに集まっていた。その流れで「じゃあ西村でも行くか」という話になることもあったが、学生の身分にはなかなか敷居が高い。西村は、先輩が一緒にいる時でないと簡単には入れない店だった。同じフルーツパーラーでも、例えば新宿高野フルーツパーラーなどと似た文化はあるのだが、渋谷の西村には独特の空気があった。もちろん、フルーツは驚くほど美味しかった。ただ、それ以上に記憶に残っているのは、店の周囲に漂っていた少し怪しい夜の気配だ。

当時の渋谷には、夜の仕事のスカウトや、どこか怪しげな勧誘の人たちがよく立っていた。今のように洗練された内装ではなく、店の雰囲気もどこか古風で、良い意味でも悪い意味でも“昭和の渋谷”の匂いが濃かった。今思い返すと、あの頃の西村は、高級フルーツ店でありながら、同時に雑多で猥雑な渋谷の街の一部でもあったのだと思う。甘いフルーツの味と、少し怪しい夜の街の匂い。それが、私にとっての渋谷西村の記憶である。

もちろん現在は内装もすっかり綺麗になり、店内には外国人観光客の姿も多く見られるようになった。かつての雑多な渋谷の空気は薄れ、店のイメージもすっかり洗練されたものへと刷新されている。それでも、私の中に残っている西村は、あの頃の少し怪しくて、そして確かに美味しかった渋谷の記憶のままなのである。

 

 

 

 

Related Articles

Recommend

Recent Articles

  1. 中国菜点心舗 まるかくさんでランチ

  2. 尾山台 こむらやでランチ

  3. 渋谷西村總本店でジェラート

  4. Bar Español LA BODEGAでランチ 2026

  5. Dior Bamboo Pavilion Daikanyama

Ranking

  1. 1

    Deconstructed Clubを研究

  2. 2

    My Arc’teryx LEAF Collection Part.2

  3. 3

    My Wrangler Denim Jacket Collection ~ Original Vintage 11MJ & 111MJ

  4. 4

    NIKE × OFF-WHITE AIR FORCE 1 MID BLACK & CLEAR

  5. 5

    コメダ珈琲店 駒沢公園でMTG

Archive
TOP