My Daughter’s Labubu Collection All-Stars
中国発のデザイナーズトイメーカー POP MART(ポップマート) は、現在では全世界で年間売上約860億円規模を誇る巨大ブランドへと成長している。その日本一号店となる 「POP MART原宿本店」 がオープンしたのは 2022年7月。原宿というカルチャー発信地を選んだ点からも、日本市場への本気度がうかがえた。
POP MARTを象徴するキャラクターのひとつが 「LABUBU(ラブブ)」 だ。このキャラクターは、中国発のものと思われがちだが、実際には香港のアーティスト Kasing Lung(カシン・ルン)氏によって生み出された。絵本的で幻想的、どこかダークさと愛嬌を併せ持つ世界観が特徴で、それをPOP MARTがアートトイとして商品化したことで、グローバルに広がっていった。
日本でラブブが本格的に話題になり始めたのは 2025年春頃。きっかけとして最も象徴的なのが、K-POPグループ BLACKPINK の Lisa(リサ) さんの存在だ。彼女がInstagramにラブブを登場させたことで、世界中のファンが「このキャラクターは何?」と一斉に反応し、瞬く間に注目が集まった。その流れを後押しするように、韓国・中国のインフルエンサーたちがラブブのぬいぐるみやブラインドボックスを次々とSNSに投稿。日本でも YouTuber や TikToker が「開封動画」や「ぬい撮り写真」を上げ始め、特に 10代〜20代 を中心に、じわじわと浸透していった。
ラブブ人気を語るうえで欠かせないのが、ブラインドボックス(中身が開けるまで分からない)という販売方法だ。シリーズごとに複数のデザインが用意され、さらに低確率で「シークレット」が封入されている。この仕組みが、コレクター心理を強く刺激する。
実際、娘が「欲しい」と言い出したことをきっかけに、抽選に応募したり、友人に頼んだり、PARCOやSHIBUYA109を回ったりと、親のほうが必死になる場面もあった。6個入りのBOXを購入しないとシークレットが出にくい仕組みのため、単品買いを続けるとあっという間に高額になる。面白い販売方法ではあるが、際限がない。そこでシリーズごとにBOX買いまで、とある程度で区切りをつけて「ここまで」と諦めさせることにした。結果的に、シークレットが1体だけ出た。それだけで十分だった、と思えるほどの満足感があったのも事実だ。
SNS時代において、ラブブの拡散は非常に分かりやすい形で進んだ。
- Instagram:おしゃれに撮影されたラブブのぬいぐるみ写真
- TikTok:ラブブと一緒に踊る動画、開封時のリアクション
- YouTube:「シークレットが出るまで買ってみた」「開封祭り」といった企画動画
こうした投稿が連鎖し、ラブブは単なるキャラクターではなく、「流行の最先端を知っている証」のような記号になっていった。
ただし、2025年の年末頃からはやや下降気味という空気も感じられる。トレンドの消費スピードが極端に早い現代において、これは自然な流れとも言えるだろう。それでも、一度コレクターになった人たちは簡単には離れない。ラブブは「一過性の流行」と「個人の愛着」の境界線に、絶妙に存在している。
子どもが欲しがり、親が振り回され、SNSが煽り、世界的スターが火をつける。ラブブ現象は、今の時代の消費と憧れ、そしてコレクション文化そのものを映し出しているように思える。
また、ボンボンドロップシール、ウォーターシール、おしりシール、シャカシャカシールといったシールが流行しているみたいだ。いずれも共通しているのは、「貼る」こと自体よりも、触る・揺らす・集めるといった体験性に価値が置かれている点である。
ボンボンドロップシールは、立体的でゼリーのような質感が特徴で、指で押したときの感触そのものが楽しい。ウォーターシールやシャカシャカシールは、中に液体やビーズが入っており、動かすたびに見た目が変わる。おしりシールは、そのネーミングとフォルムのユーモラスさで、子どもたちの笑いと好奇心を一気に掴んだ。
これらのシールは、決して高価なものではない。むしろ、数百円で手に入る“小さな贅沢”だ。しかし、その分シリーズ展開が多く、「次はどれにするか」、「友だちと交換する」といった遊びが生まれやすい。ここには、かつてのカードダスやおまけ文化に通じる、日本独特のコレクション体験がある。
また、こうしたシール人気の背景には、SNSとの相性の良さも見逃せない。スマートフォンで撮影すると、立体感や透明感が強調され、短い動画や写真でも“かわいさ”が伝わりやすい。TikTokやInstagramでの投稿をきっかけに、「それどこで買ったの?」という会話が生まれ、流行が横に広がっていく。
ラブブのようなアートトイが、抽選やブラインドボックスを通じて「少し背伸びしたコレクション」だとすれば、これらのシールは、より日常に近い、低年齢層にも開かれた流行と言えるだろう。高額化・限定化が進むトイカルチャーの一方で、手軽で感覚的なアイテムが支持されている点は、今の時代の消費感覚をよく表している。
流行は移ろう。しかし、こうした小さなアイテムに夢中になる体験は、世代が変わっても形を変えて繰り返される。今、子どもたちのポケットや筆箱の中に入っているシールは、彼女らにとっての「いま一番リアルなトレンド」なのかもしれない。








