Supreme Revolution: McLaren × Horn × Hague / マルコム・マクラーレン × トレヴァー・ホーン × スティーヴン・ヘイグが仕掛けたヒップホップ革命

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Supreme Revolution: McLaren × Horn × Hague / マルコム・マクラーレン × トレヴァー・ホーン × スティーヴン・ヘイグが仕掛けたヒップホップ革命

― ヒップホップとサンプリング革命、そしてニューウェーブ・ポップの架け橋 ―

1979年、ニューヨーク。Sedivine the Mastermind(ラリー・プライス)と Just Allah the Superstar(ロナルド・ラーキンス Jr.)によって結成された World’s Famous Supreme Team(WFST) は、黎明期のヒップホップを象徴する存在となった。パーティーを沸かせ、ラジオ番組「World’s Famous Supreme Team Show」を通じて広まった彼らのスタイルは、まさに新しい文化の鼓動だった。

その人気は大西洋を越え、イギリスの仕掛け人 マルコム・マクラーレン の耳に届く。パンクの元祖であり、常に時代を先取りしてきたマクラーレンは、ニューヨークで出会ったWFSTを自らのプロジェクト『Duck Rock』(1983年)に参加させた。

ここでキーパーソンとなったのが、イギリスの革新的プロデューサー Trevor Horn と、その仲間たち Art of Noise である。

Trevor Horn と Art of Noise ― サンプリング革命

トレヴァー・ホーンは「Video Killed the Radio Star」で世界を驚かせた The Buggles の元メンバー。

1980年代に入るとプロデューサーに転身し、最新のデジタルサンプラー フェアライトCMI を駆使して、これまでにない音響世界を築き上げた。

彼と組んだのが、作曲家アン・ダドリー、エンジニアのゲイリー・ランガン、音楽ジャーナリストのポール・モーリー。彼らが結成した Art of Noise は、「Beat Box」「Close (to the Edit)」「Moments in Love」で、電子音楽とサンプリングの新時代を切り拓いた。

Buffalo Gals ― ヒップホップと実験音楽の融合

このホーン/Art of Noise チームと WFST の邂逅こそ、ヒップホップ史における大事件だった。
『Duck Rock』から生まれた 「Buffalo Gals」(1982年)は、スクラッチ、コール&レスポンス、そしてサンプリングが融合した世界初の“ヒップホップ×アヴァンギャルド”の名曲。


この曲はヒップホップをアメリカのストリートからヨーロッパへ広めるきっかけとなり、後のクラブカルチャーやリミックス文化の礎となった。

Stephen Hague ― もう一つのプロデューサー潮流

同じく80年代、もう一人の重要なプロデューサーが登場する。
それが Stephen Hague(スティーヴン・ヘイグ) だ。

アメリカ出身の彼は、イギリスの音楽シーンで大成功を収め、ホーンやアート・オブ・ノイズの「実験性」に対して、洗練されたメロディとポップセンス を武器にした。

彼の代表的なプロデュース作品は以下の通り:

  • Pet Shop Boys「West End Girls」「It’s a Sin」など
  • New Order「True Faith」「Regret」
  • Erasure「Chains of Love」「A Little Respect」
  • Dubstar「Stars」「Not So Manic Now」
  • Robbie Robertson(The Band の中心人物)のソロ作品

ヘイグはシンセポップ/ニューウェーブの黄金期を築き、電子音楽にポップの普遍性を与えた。Trevor Horn が実験的・革新的に“音を解体・再構築”したのに対し、Hague は“メロディと情感”を前面に出すことで世界的ヒットを連発。両者は80年代の音楽潮流を二極から支配したと言える。

Supreme Team のその後

WFSTは「Hey DJ」(1984年)で Billboard チャート10位を記録。

このクラシックは、Mariah Carey「Honey」をはじめ、Lighter Shade Of Brown、De La Soul、Warren G、AZ, N-Tyce など数多くのアーティストにサンプリングされ続けている。


1986年にはアルバム『Rappin’』をリリースし、90年代後半には KRS-One や Rakim らと共演したコンピレーションも登場した。

2000年代以降も彼らは活動を続け、ラジオ出演、新曲制作、さらに「Hey DJ」のジャジーなリメイク「Hey DJ Steppers Delite」を発表。オールドスクールの魂を守りつつ、新しい時代のリスナーにも響くサウンドを探求している。

クロスオーバーが生んだ革命

  • World’s Famous Supreme Team:ヒップホップ黎明期の語り部
  • Trevor Horn / Art of Noise:サンプリングと電子音楽の革命児
  • Stephen Hague:メロディとポップセンスで電子音楽を世界的ヒットに導いた名匠

この三者の存在が、80年代〜90年代の音楽を形づくった。
「Buffalo Gals」が象徴したように、ヒップホップと電子音楽の交差はカルチャーを揺るがし、さらにヘイグのプロデュースワークがその実験性をポップの王道へと橋渡しした。

それは単なる音楽の枠を超え、時代の空気を変える クロスオーバーの力 を証明する出来事だったのである。

また、日本の角松さんも85年にリリースしたアルバムGold Digger -With True Love- に収録のSecret Loverでいち早く取り入れていた。

このアルバムには個人的にかなり影響を受けた好きな曲がたくさんあります。

 

 

 

 

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