Thank You Jay Dee Mixed By J. Rocc Series

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Thank You Jay Dee Mixed By J. Rocc Series

いま振り返ると、J. Roccによる「Thank You Jay Dee」Mixのシリーズは、単なるトリビュート以上の意味を持っていたように思う。2007年、極わずかに出回った第一弾が話題となり、その後「Vol.2」、さらにダウンロード版で「Thank You Jay Dee, Act 3 & 4」へと続いていった。リリースのたびに耳にしたときの高揚感を、当時のリスナーはきっと鮮明に覚えているはずだ。

あの頃からすでにJ Dillaの音楽は「伝説化」していた。しかし、J. RoccのMixは追悼の枠にとどまらず、彼のビートを“いまここ”に鳴らし続ける力を持っていた。Jay Dee名義、The UmmahやThe Soulquariansの一員として制作していた時代、J Dilla、Jaylib、James Yancey名義でのプロデュース作品がクロスオーバーし、Pharcyde「Runnin」、De La Soul「Stakes Is High」、Slum Village「Get This Money」といった定番から、Jaylib「The Official」のざらついた質感、そしてレアなリミックスまで。選曲と構成には、Dillaと共に時間を過ごした者にしか生み出せない「体温」が宿っていた。

2013年の年末、Act 3 & 4を聴きながら感じたのは、モコモコと転がるビートと、スモーキーな電子音。ユルさとクレイジーさが混ざり合うその空気感は、リスナーをただチルアウトさせるだけでなく、時間の流れそのものを一瞬止めてしまうようだった。あのとき確かに、過去と現在をつなぐ“音の物語”の中に自分がいると感じられた。

そして2025年のいま聴き返すと、その感覚はますます強まっている。Dillaの死からすでに20年近い時間が経ったが、J. RoccのMixを通して鳴る彼のビートは、もはや記憶の中の遺産ではなく、いまも生き続ける呼吸のように響いてくる。デトロイトとLAを繋いだサウンドの旅路は、時間の隔たりさえ飛び越え、今日の私たちの耳にまっすぐ届くのだ。

悪くなるはずがない。そう思って聴き始めても、なお心を揺さぶられるのは、Dillaという存在がただ偉大だったからではなく、それを最も近くで理解していたJ. Roccが、愛と敬意をもって紡いだからにほかならない。いま改めて耳を傾けると、このMixは“追悼盤”ではなく“現在進行形のJay Dee”を体感させる作品であることに気づく。

 

 

 

 

 

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