失われた30年の裏側で、日本円は何を支えてきたのか

COLUMN

失われた30年の裏側で、日本円は何を支えてきたのか

失われた30年の裏側で起きていたこと

そして、これから始まる真逆のパラダイム

日本は「失われた30年」を経験したと言われる。だが本当に失われていたのは、成長そのものだったのだろうか。むしろこの30年、日本は世界金融システムの中で、ある特定の役割を担い続けてきた。それは、低金利通貨・円を供給し続けるという役割である。

円安は市場の結果ではなく、構造だった

1990年代後半以降、日本は超低金利政策を継続してきた。これにより円は、世界で最も調達しやすい通貨の一つとなった。円を借り、外貨に替え、海外資産で運用する。いわゆる円キャリー(円スワップ)トレードである。

この取引は一時的な投機ではない。グローバル金融システムの中に組み込まれた構造そのものとして拡大していった。

数千兆円規模で動いた「円」という資源

国際決済銀行(BIS)などのデータをもとにした市場推計では、円キャリーや関連デリバティブを含む累積的なエクスポージャーは数千兆円規模に達しているとされる。しばしば「3000兆円前後」と語られるこの数字は、単純な資金流出額を意味するものではない。円という通貨が、海外市場で回り続けてきた規模感を示す表現だ。その結果、日本国内には投資も賃金上昇も回りにくくなった。一方で、日本円は世界経済を下支えし続けていた。

私たちは、その只中で社会に出た世代だった

私は1970年代生まれ、いわゆる団塊ジュニア世代である。学生から社会人へと切り替わるタイミングで、一つ上の世代とは真逆の現実、就職氷河期を経験した。実体経済は冷え込み、「努力すれば報われる」という80年代的成功モデルは、すでに現実と乖離していた。その一方で、横目に見えていた世界もある。IT業界という、急成長するブルーオーシャン。実体を持たず、スピードと情報で価値を生むビジネス。そして、それに付随して拡大していったコンサルタントという職業。同じ時代に、まったく異なる成長曲線が並走していた。

金利と信用が、人の行動を変えていった

庶民の生活環境も、80年代とは大きく変わっていった。超低金利の常態化。信用スコアが低くても可能な借り入れ。レバレッジを効かせた投資商品の一般化。本来であれば慎重であるはずの人々が、「借りられるから借りる」、「増えているように見えるから参加する」そんな空気に包まれていった。

私の仲間たちの中でも、とくに低賃金層ほど

  • 無理のある住宅ローン
  • ペアローン
  • FX
  • 仮想通貨

に手を出す者が増えていった。

それは無知だったからではない。もちろん見栄を張る者もいたが、生き残るために、背に腹は代えられなかったのだ。

その前提が、いま揺らいでいる

現在起きているのは、単なる金融政策の微調整ではない。

  • 日本は利上げ局面へ
  • 米国は利下げ方向へ
  • 金利差は縮小しつつある

これは、「円を安く借り続けられる」という前提条件そのものの変化を意味する。同時に、ドルを軸とした国際通貨体制も、地政学的分断や財政制約の中で相対化が進んでいる。

天地が逆転するとは、こういうことだ

これから起きる変化は、円高か円安かという単純な話ではない。

  • 円安=国益、という発想の見直し
  • 米国一強モデルの調整
  • 日本は停滞国、という固定観念の崩れ

長く「下」にあると見なされてきたものが再評価され、「上」にあったものが調整を迫られる。価値の序列そのものが反転する局面に入っている。

それでも、人はなぜ繰り返すのか

資本主義という仕組みの中で、誰かが借金をして成長すること自体は避けられない。時代は、人間の欲望をときに肯定し、後押しもする。だが一度、環境が変わってしまえば、返済しようのない金額を背負う瞬間が訪れる。それを日本は、80年代のバブル崩壊で確かに経験した。それでもなお、同じ構造は形を変えて繰り返される。

なぜか。欲という感情は、記憶よりも強いからだ。

失われた30年は、準備期間だったのか

この変化は一気には進まない。
しかし、元に戻ることもない。

失われた30年とは、何も生まれなかった時代ではない。次の時代の歪みを、一身に引き受けていた期間だったとも言える。

これから問われるのは、どの前提が終わり、どの価値が残るのかを見極める力だ。

世界は今、静かに、しかし確実に、逆さまになり始めている。

… to all comrades.

 

 

 

 

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