Patisserie Tadashi YANAGI 八雲
自由が丘スイーツ激戦区で名店がまたひとつ幕を下ろす
パティスリー タダシ ヤナギ 八雲店が2025年11月16日閉店する
自由が丘は「スイーツ激戦区」としてその名を全国に轟かせてきた街だ。高級パティスリーから老舗、個性派カフェまで、多彩な店が密集し、訪れるたびに新しい発見がある。そんな街において、またひとつ惜しまれる閉店のニュースが飛び込んできた。「パティスリー タダシ ヤナギ 八雲店」が、2025年11月16日をもって長い歴史に幕を下ろすという。
自由が丘を彩ってきた名パティスリーたち
自由が丘では、「パティスリー・パリセヴェイユ」や「モンサンクレール」、「エムコイデ」といった名店が長年にわたり激戦区を形成してきた。
パリセヴェイユは、フランス修行経験を持つシェフのセンスと技術が光るハイクオリティなケーキで知られ、「ムッシュ・アルノー」や「ガトーバニーユ」はいまや代名詞的存在。モンサンクレールは革新的なケーキでファンを魅了し、エムコイデは「ノワゼッティーヌ」をはじめ、上質で美しく、甘さ控えめなスイーツで人気を獲得している。
華やかな名店だけではない。「オリオン洋菓子店」のような地元密着の老舗から、創業38年のパンケーキ専門店「花きゃべつ」まで、多彩な店が自由が丘の“甘い文化”を支えてきた。しかし、この数年は“閉店”のニュースも目立つ。花きゃべつは45年にわたる歴史に幕を下ろし、「パティスリー・ア・ラ・カンパーニュ 自由が丘店」も閉店。2022年に韓国スイーツ&カルチャーのエンタメパークとしてリニューアルした「自由が丘スイーツフォレスト」も、2024年をもって再び休園するなど、街のスイーツ地図は大きく変化している。
名店・タダシ ヤナギ、惜しまれ閉店へ
こうした変化の中、今回閉店を迎える「パティスリー タダシ ヤナギ 八雲店」は、自由が丘界隈のスイーツファンにとって特別な存在だった。シェフ・柳忠司氏の生み出すケーキは、フランス菓子の伝統と日本の繊細さをかけ合わせた端正なものばかり。住宅街にひっそりと佇む八雲店は、静かに、しかし確かな存在感を放ちながら、地元の人々、そして遠方から訪れるファンに支えられてきた。閉店の知らせが届いた直後から、「最後にどうしても食べたくて」と買い納めに訪れる人々が列を作り、SNSには“タダシ ヤナギ最後の味”を惜しむ声が溢れている。
自由が丘スイーツの現在地──入れ替わり続ける街で
自由が丘は、洋服店から飲食店まで、常に店舗の入れ替わりが激しい街だ。かつての老舗が姿を消す一方、新たに増えてきたのはドーナツ専門店をはじめとする最新トレンドの店。街の雰囲気そのものが、時代の流れと共に形を変えている。タダシ ヤナギの閉店は、その変化のひとつの象徴とも言える。名店がまたひとつ消えてしまう寂しさはあるが、同時にこの街は、常に新しい文化を生み、吸収しつづけてきた街でもある。
これからの自由が丘に期待して
スイーツ激戦区として名を馳せた自由が丘。その歴史に深く刻まれてきた名店が閉店するニュースは、確かに胸に寂しさを残す。しかし、自由が丘がこれまで歩んできた道のりを考えると、この街が再び魅力的なスイーツ文化を育んでいく未来は、けっして暗くない。タダシ ヤナギのケーキを懐かしむ声がこれからも語られ続けるように、新しい時代の自由が丘にも、再び人々の心に残る店がきっと生まれてくるだろう。
