CASSINA IXC. Le Corbusier 〜 Maintenance
Le Corbusierとともに生きる 〜 家具とメンテナンスの話
イタリアへ行く機会が増えた二十代の頃、フィレンツェやミラノを巡る中で自然と惹かれていったものがあります。それが、Le Corbusier(ル・コルビュジエ)の家具でした。
建築家としての彼の名はもちろん知っていたけれど、実際にその椅子に座り、時間を過ごしてみると、ただの「デザイン家具」ではない、何か強い“存在感”のようなものを感じたのを覚えています。
そんな中、仲間のユウヤの協力で手に入れたのが、LC2の三人掛けソファ。当時の自分にとっては大きな買い物でしたが、それ以上に「これからの人生を共にする家具を迎えた」という感覚がありました。
家族が増えて、椅子も増える
やがて家族ができ、子どもが生まれ、暮らしのかたちも変わっていきました。そのタイミングで自然と増えたのが、LC2の一人掛けを2脚。
座る人が増えるたびに家具が増えるのは、ごく自然な流れでした。ただ、単に「数が増えた」というだけではなく、家族の時間を支える居場所が増えた、という感覚の方が近いかもしれません。
メンテナンスを重ねることで、家具は育つ
家具というのは、買って終わりではありません。特に、ル・コルビュジエのような名作家具は、手入れを重ねることで価値が深まっていくものだと感じています。
我が家では年に2回、専用のレザークリームでしっかりケアをしています。しかし、どれだけ丁寧に扱っていても、中材は少しずつ痩せていき、やがてソファに沈み込みが出てくるようになります。
もう一つ忘れてはならないのが、ソファの底部に張られている「エラストベルト」。これは格子状のベルトで、長年使ううちにどうしても伸びや劣化が出てきます。このため、我が家では10年を目安に、中材とベルトの交換を正規のメンテナンスで実施しています。
メンテナンス費用も「持つ楽しみ」の一部
ちなみに、こうしたメンテナンスにかかる費用ですが、約10年に一度、配送料込みで現行価格の約10%ほど。 最初にかかる本体価格に比べると、ごく現実的な範囲だと思います。 考えてみれば、3年おきの外国車の車検や、6年ごとのパテック・フィリップやA.ランゲ&ゾーネといった高級時計のオーバーホールも、おおよそ5~10%のメンテナンスコストがかかります。 つまり、 「良いものを長く使い続ける」ためには、あらかじめメンテナンス費用も視野に入れておくことが大切だということ。 逆に言えば、それだけで10年、20年と使い続けられるのだから、所有する喜びを深める投資とも言えるのではないでしょうか。
パンパンに仕上がったソファが帰ってくる喜び
メンテナンスを終えたソファが自宅に戻ってくると、思わず笑みがこぼれます。中材もベルトも交換されたソファは、まるで新品のように張りと弾力を取り戻している。「これこれ、この感触」と思いながら腰を下ろすと、不思議とその椅子に初めて座った時の記憶がよみがえってきます。
年月を経たことで家具にも“味”が出てくる一方で、メンテナンスによってあの頃のフレッシュさも蘇る。そんな“時間の往復”ができるのも、名作家具の魅力かもしれません。
家具は人生の記録でもある
このLC2のソファには、二十代の頃からの思い出が詰まっています。家族や仲間との時間、海外での出会いや体験。すべての瞬間がこのソファの上に刻まれてきたように思います。
決して消費されるだけのモノではなく、人生を共に歩む“パートナー”のような存在。これから先も、きちんと手をかけ、永く大切に使い続けていきたいと思っています。
おわりに
良い家具は、人生の質を少しだけ上げてくれる。そして、手入れをしながら使い続けることで、より深い愛着が育まれていくものです。
日々の暮らしの中で、家具とどう向き合うか。それは、きっと「自分自身や家族の時間をどう大切にしていくか」と同じ問いなのかもしれません。
Le Corbusierがいない2ヶ月は、ARNE JACOBSENのSWAN ™ スワンチェア をリビングへ移動
勉強部屋は、EGG™ エッグチェアと円 コーヒーテーブル A223だけの体制となる



