Alain Mikli Boutique Minami Aoyamaでメンテナンス 2026
STARCK EYESのメンテナンスをしてもらっていた時にこれから貴重なんで大切に使った方が良いと話題に出たのでコラムを書いてみる事にした。
1996年、世界的デザイナー Philippe Starck と、革新的アイウェアデザイナー Alain Mikli のコラボレーションによって誕生した STARCK EYES。単なる“デザイン性の高い眼鏡”という枠を超え、プロダクトデザインと人間工学、そして未来思想が融合した革新的なアイウェアブランドだった。最大の特徴は、人間の肩関節の動きから着想を得て開発された独自ヒンジ機構にある。従来の眼鏡フレームに存在していた「締め付け」「歪み」「可動域の制限」といった問題を見直し、人間の自然な動きに近づけるという発想から誕生したこのヒンジの開発には、実に約3,000時間もの時間が費やされたという。
その思想は、単なる機能改善ではない。フィリップ・スタルクは当時、「1,000年先を見据えたデザイン」という哲学を掲げていた。流行や消費サイクルのためではなく、“人間そのもの”に寄り添うためのデザイン。それは、装飾を競うラグジュアリーとは違い、未来の生活や身体との関係性まで考え抜かれたプロダクトだった。実際にSTARCK EYESを掛けると、その違いは明確に分かる。顔を締め付ける感覚が少なく、まるで身体の一部のように自然に馴染む。派手に主張する訳ではないが、機能と造形美が極めて高次元で融合しており、“分かる人には分かる”プロダクトだったと思う。
私は1996年から2022年頃まで、約2年おきに買い続けていた。新しいモデルが出れば気になり、気付けば長年にわたり生活の一部になっていた。それは単純なファッションアイテムとしてではなく、自分の感覚や価値観に近い存在だったからだと思う。時代は大量消費へ進み、眼鏡も「価格」や「流行」が優先される時代になった。しかしSTARCK EYESには、“長く使う価値”や“思想を身につける感覚”が確かに存在していた。だからこそ、全モデル廃盤となった現在でも、多くの愛用者たちから惜しまれ続けているのだろう。
今振り返ると、STARCK EYESは単なる眼鏡ブランドではなかった。それは、「人間の身体と道具の理想的な関係」を追求した、90年代デザインカルチャーの到達点のひとつだったのかもしれない。






